実写版『機動警察パトレイバー』や『魔女の宅急便』、そして数々のアニメ映画など、早くも話題作、期待作が多数挙がっている日本の映画業界。
だが、話題の割には大コケしてしまう映画もちらほらあるわけで……。
ここでは現場の関係者から話を聞き、期待作といわれても、実はヤバそうなものはどれか? を勝手に予想した。

過去最多となる591本もの作品が公開された2013年の邦画業界は、宮崎駿監督の『風立ちぬ』が、2位の『ONE PIECE FILM Z』に、ほぼダブルスコアの大差をつける興行収入120億円でひとり勝ちを収めた一方、総製作費80億円の超大作『ガッチャマン』や、大名作のリメイク版『おしん』、30年ぶりとなるフルCGの完全新作『キャプテンハーロック』といった実写化モノが興行的に大爆死。そのド派手なコケっぷりは、ダメ映画の黒歴史に新たな1ページを焼きつけた。

では、今年のラインナップは果たしてどうかといえば……。

アンチの多さでは芸能界屈指の2大スター、水嶋ヒロ&剛力彩芽の共演作『黒執事』が、さっそく怪しげな雲行きになっているほか、春先にはいろんな意味で話題沸騰の『魔女の宅急便』と『THE NEXT GENERATION パトレイバー』がいよいよ公開。夏以降にも『ホットロード』や『STAND BY ME ドラえもん』、さらには『ルパン三世』と、原作とのギャップを想像するだけで胸騒ぎを覚えずにはいられない企画モノが目白押しとなっており、ダメ映画市場はいつにも増して大賑わいの予感がプンプン漂うありさまだ。

しかしそもそも、こうまで原作モノが幅を利かせている要因とはなんなのか。内情をよく知る業界関係者A氏は次のように解説する。

「よくいわれることですが、民放キー局が主導する製作委員会方式の大作主義がすべての元凶です。彼らの興味は、DVDセールスやグッズ販売、パチンコ化の版権料といった副次収入すべてを含めたワンパッケージで最終的に利益が出るかどうかの一点だけ。映画を作ること自体にはそこまでの旨味はありませんから、採算が取れて、なおかつ儲かるコンテンツであれば、ぶっちゃけ中身はどうだっていいんです。となれば、当然リスキーなオリジナルで勝負をするより、ある程度は数字が見込める原作モノのほうが安パイという論理になる。それが行きすぎると、昨年の『体脂肪計タニタの社員食堂』や"食べラー"ブームに便乗した一昨年の『ペンギン夫婦の作りかた』(石垣島ラー油を作った夫婦の話を物語化)と いった、数年後には恥ずかしくてとても直視できないポンコツ作品にまでゴーサインが出てしまうことになるわけです。

とはいえ、業界内にはオリジナルで勝負するだけの体力が残ってないという部分があるのも確かです。現に昨年のヒット作を見ても興収10億円を突破した35本のうち、オリジナルは、是枝裕和監督の『そして父になる』と三谷幸喜監督の『清須会議』、宮藤官九郎脚本の『謝罪の王様』の3本だけ。これらにしたって彼らにネームバリューがあるからこそ、企画として成立しただけですから、アイデアの枯渇はここ数年で深刻化しているといっても過言ではありません」

ただ、例え企画先行の原作モノであっても、それが作品として楽しめるものであれば、むしろ大歓迎。まもなく続編が公開される『テルマエ・ロマエ』(12年)や『るろうに剣心』(12年)のような完成度の高い作品には、誰もが喜んで1800円を払うだろう。では、粗製濫造される企画モノの中から、そうした良作を取捨選択するにはどうすればよいのか。

「作品の良し悪しを決める判断基準として、製作&配給がどこかをまず確認するというのはひとつの手です。邦画のトップランナーといえばやはり何をおいても東宝です。

その証拠に、ここ数年は当たりそうな企画はまず東宝に行って、ダメなら次は東宝の映像事業部。そこにさえ引っかからなかったものが東映、松竹ほかに流れ着くというサイクルが確立しつつある。
もちろん『相棒』を始めとしたテレ朝系ドラマの劇場版や、松竹と関係の深い山田洋次監督作といった一部の例外はありますが、東映、松竹やその他の配給会社が主導する企画モノは、どうしても一段落ちるという印象です。

なるほど…ガッチャマンは、制作費80億円だったのか。
じゃ、進撃の巨人もそれくらいの制作費はかけるな〜(笑)